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21歳の弘前和太鼓職人 塩谷氏が追いかける父親の背中と、研鑽の日々

青森県/Aomori

津軽和太鼓とは

津軽和太鼓は青森県弘前市で製作されている太鼓をさします。青森県で有名な祭りの1つに「ねぷたまつり」「ねぶた祭り」(※注1)があります。この夏を彩る祭りに欠かせないのが太鼓で、津軽和太鼓は弘前の手工業製品である桶を用いるのが特徴です。一本の木をくりぬいた胴に、厚さ2mm程に削った馬や牛の皮を張って仕上げます。皮の部分はすべて手作業でおこなわれますが、特に自然条件を考慮しながらの仕上げなので、この部分の工程が重要であると言われています。また、太鼓によっては皮の表面に黒い模様を施す作業もあり、筆を使って綺麗に模様を描く必要もあります。そして、津軽の太鼓は細長い撥(ばち)で叩くところが他の和太鼓と異なり特徴があります。

なお「ねぷた(ねぶた)」は東北地方から北関東の各地で行なわれてきた旧暦 7月7日の行事の一つ。悪疫をはらう意味がある行事です。呼び名が少し違うのと、下記のような違いがあります。

(注1)
弘前ねぷたまつり(祭りの期間:8月1日~8月7日)
・大半が扇型のねぷたで、80台以上の参加
・高さは大型のもので6m~10m弱(特に制限はないが電線などの問題あり)
・子供たちがねぷたを引く
・ゆったりしている(団体による)
・掛け声は「ヤーヤドー」

青森ねぶた祭(祭りの期間:8月2日~8月7日)
・人形型のねぶたがほとんどで、20台ちょっとの参加
・高さは4~5mで横に9mくらいと横に広い(歩道橋の関係で大きさに制限がある)
・ハネト(跳人)が存在する(衣装を用意すれば気軽に参加できる)
・盛り上がりがある
・掛け声は「ラッセー(ラー)」

津軽和太鼓の工程

津軽和太鼓がどのように作られているのかを順番に説明します。

①胴の準備
太鼓の音を響かせるために、胴の部分がかなり重要になってきます。
素材も重要ですが、弘前の太鼓は中の気を少しだけ削って羽のようにする作業を施します。こうすることによって、音がより響くようになります。

弘前和太鼓は桶の胴を使っていて、この桶に適しているのは、国内産の杉が良いと言われています。生木を切り出し大まかな太鼓の形にしてから数年、慎重に時間をかけて乾燥させていきます。完全に乾燥したら、形や口を整え、内部を仕上げていきます。

②皮の準備
太鼓には、きめが細かく伸びのある和牛の皮を使用します。一頭から取れる皮でも、太鼓の種類により使う場所が異なります。皮専門の職人が目利きをして使う部位を決めていきます。

■締め太鼓の皮
締め太鼓とは、両側の皮面の縁にひもを通して、胴を挟んで締め上げた太鼓のことを指します。この太鼓の場合には事前に太鼓の表面を縫い、絵柄を描きます。
表面は、革で縫う部分と、糸で縫う部分があり、それぞれ手作業で仕上げます。ひと目ひと目しっかりと締め上げながら縫うのでとても丈夫です。

■鋲打ち太鼓の皮
鋲打ち太鼓は胴の両端に革を直接張り鋲を打って固定した太鼓のことを指します。
鋲打ち太鼓の場合には、まず生皮を太鼓の大きさに裁断します。そして、胴張れるように形を予めとり、その皮を乾燥させます。
約一週間天日干しした後に、数年間室内で乾燥(枯らし)させます。新しい革は伸びやすく音色も悪いので、最低でも2~3年は枯らす作業を行います。枯らす年数は長いほど革自体が丈夫になり、音色も良くなります。

③仕上げ

■締め太鼓の仕上げ
胴と皮を縄で締めます。均等に締めなければならず、少しずれただけで音色が変わってしまいます。また、縄の締め方で音質の調整ができるので、ここが職人の腕の見せ所です。

■鋲打ち太鼓の仕上げ
皮を張り、音が決まったところで鋲を打ちます。規則正しく一定のリズムと間隔で打っていきます。

若くして太鼓作りに励む塩谷氏

ここからは若くして太鼓作りに励む塩谷一真氏に迫ります。

1998年3月23日生まれの21歳(取材当時)。塩谷太鼓店の4代目で、家業を継いでからは5年目とのこと。
継いだ当初は父親の作業姿を見ながら勉強し、とにかくどのようにやっているのか、どのように手先を動かしているのかなどを見て学んだそう。太鼓作りに関する参考書などがないため、とにかく父親が参考書代わりなので見て覚えるしかないとのこと。毎朝8時から作業をし、今では少しずつ作業できる範囲が増えてきているそうだ。

1番大変な作業工程

太鼓作りの中で1番大変な作業を聞いてみました。すると即答で締め太鼓の紐を締める作業との返答がありました。
ここが職人の腕の見せ所で、締め方によって音色が変わってしまいます。お客様からの注文通りかつ最高の音色を出すためには、最後の締めの作業がとても重要になってきます。

塩谷氏は「この工程にゴールはなく一生かけて最高の締め方を追い求めなくてはならない」と強い意志を感じさせる表情で語ってくれました。

太鼓作りの魅力とは

太鼓は出来上がってお客様に納品して終わりではなく、使い込んできてやっと良さが評価される工芸品だと塩谷氏は教えてくれました。
納品してすぐに叩いた際の良し悪しも重要ですが、その太鼓を祭りで何年も何年も使い込んできて味が出てきて、それでも良い音色が続くのが良い太鼓とのこと。これはどの伝統工芸品にも言えることだが、長い年月を経ても良さが残る…当初より良さが増してくるのが日本の工芸品の良いところ。
そして、お客様の意見を聴きながら、太鼓作りに反映させるのも自分の仕事だと楽しそうに語ってくれました。

今後の弘前和太鼓

実際に祭りで太鼓が叩かれている時、遠くからでも太鼓の縫い方などで自分が作った太鼓かどうかが分かるとのこと。この塩谷家で代々続いてきている太鼓の技法や知見を、これからもちゃんと残していきたい。そして青森県内に関わらず、日本の祭りという文化の中にある太鼓、そしてその風景をずっとずっと残していきたいと最後に話してくれました。そのために、まずは父親を目標として、父親に追いつけるように日々努力していきたいと決意を語ってくれました。

そして、もし可能なら、自分と同じ年齢の太鼓職人が増え、その人たちと意見交換したり太鼓の将来についても語れたら嬉しいと最後に教えてくれました。

塩谷太鼓店
〒036-8006 青森県弘前市南大町2-1-3
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