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「西陣織を丁寧に製作すれば、その思いに比例して世界に拡がる 」京都西陣織を愛する藤原氏

京都府/Kyoto

西陣織とは

西陣織の特徴をひとことで言えば、先に糸を染め横糸で柄を織る先染めの紋織物。1976年年2月26日に国の伝統工芸品に指定された。

ちなみに、「西陣」という行政区は特になく、西陣織にたずさわる業者がいる地域が一般的に西陣と呼ばれている。地域としては上京区、北区を中心に、南は丸太町通、北は上賀茂、東は烏丸通、西は西大路通に囲まれたあたりを指す。西陣の織屋は平安朝以降連綿と続いてきた技術とともに、優れたデザインのため創造力や表現力への努力を重ねている。

西陣織の歴史

室町時代(1336年-1573年)に、11年に及ぶ長い戦いであった応仁の乱(1467-1477)が終わると、戦乱を免れるために各地に散らばっていた織物職人たちも京都に戻ってきた。戦乱の際に武将である山名宗全(やまなそうぜん)が率いる西軍の陣地が置かれていたあたりで、織物作りが再開される。以前から織物の町として栄えていた京都北西部の一帯が「西陣」と呼ばれるようになったのはこの頃からで、西軍の陣地跡だったことから「西陣」と呼ばれるようになったといわれている。

京都で織物作りが始まったのは、西暦400-500年の間。平安遷都とともに宮廷の織物を管理していた「織部司(おりべのつかさ)」と呼ばれる役所が置かれ、今の上京区黒門上長者町あたりに住んでいた職人に、綾や錦など高級な織物作りを奨励したのにともない、発展した。

平安時代(794年-1185年)も半ばを過ぎると、織物も衰えてきたが、職人たちは織部司の東の大舎人町あたりに集まって住み、宮廷の管理下を離れた自由な織物作りを開始したとされている。そして「大舎人(おおとねり)の綾」、「大宮の絹」などと呼ばれる織物などが作られた。また、中国の宋から伝えられた綾織の技を研究して、中国から伝来した唐綾のオリジナル版などを開発した。その後、その織物が神社や寺院の装飾にふさわしい重厚な織物として重宝されていく。

西陣織の品種・特徴

西陣織は企画・図案からはじまって意匠紋紙、糸染、整経(セイケイ)、綜絖(ソウコウ)、金銀糸、完成までに20を超える工程を経て作られている。織機は、綴機、手機、力織機の3種類があり、そこから生み出される品種(種類)は、国が指定しているだけで12種類もある。それぞれの紋様に歴史があり、それぞれが違う織り方で美しい模様が作られている。
中でも代表的なものに「綴(つづれ)」というものがある。平織りから発展した織り方で、横糸を紡ぐことで織り柄を出す方法。そのため、縦糸に比べて横糸は3~5倍も密度が大きいのが特徴で、縦糸を包むように織っていく。
そのため、まるで縦糸が存在しないように見える品種だ。複雑な絵柄になると、丸1日かけても1cm四方しか織ることができないこともある。
ここでは国に指定されている伝統工芸品「西陣織」を紹介していく。
・綴(つづれ)
・経錦(たてにしき)
・緯錦(ぬきにしき)
・緞子(どんす)
・朱珍(しゅちん)
・紹巴(しょうは)
・風通(ふうつう)
・綟り織(もじりおり)
・本しぼ織り(ほんしぼおり)
・ビロード
・絣織(かすりおり)
・紬(つむぎ)

藤原弘子氏

西陣織の伝統工芸士である藤原弘子氏に話をうかがった。
藤原氏は1937年生まれ、京都に生まれ育つ。家業が織屋だったため、後を継ぐために現在とは異なる場所で西陣織を2年間ほど学び家業として約10年、その後は西陣織会館で約42年携わってきている。

海外の観光客が多い西陣織会館では、どのお客さまも興味深そうに手機の実演を見学。西陣織の魅力を知っていただけることは非常に嬉しいとのこと。中には長い時間見学される人も多いらしく、英語での質問には見本を見せながら、これはこうしてできるんですよと丁寧に説明しながら織ると、とても喜んでくださいますと楽しそうに話してくれた。

話を聞いていて気になったのが、藤原氏が座っている部分。ただの木の部分に座布団を敷いているだけで背もたれがない。長時間の作業で疲れないかと聞いたところ、敷枚に切り込みが入っているため全く疲れないとのこと。この機を作った当時の方の知恵ですと教えてくれた。

これからの西陣織

作業をしながらも、ずっと笑顔を絶やさず親切に話をしてくれた藤原氏に、今後の西陣織について聞いた。
今まで、西陣織を製作する作業に関わってきて、一度も大変だと思ったことはないとのこと。それは小さい頃から西陣織が家業として身近にあったこともあり、生活の中に溶け込んでいたから。藤原氏自身が時間をかけて丁寧に作業をすればその思いに比例して、それを気に入ってくれた方が、自分が作った西陣織がいいと購入してくださる。気に入って大切に使い続けられるからこそ、その方の子供や孫の代まで受け継がれていく。そんな嬉しい状況を今まで見てきて、西陣織の仕事が大変だと思ったことはないとはっきりと言い切ってくれた。国内外を問わず間近で実演を見ることができるのも、興味を持ってもらい買ってくださえる要因の一つとも。本当に毎日が楽しいと満面の笑みで語ってくれた。

これからも、この素晴らしい西陣織が京都のこの地域で残っていってほしい。

西陣織会館
〒602-8216
京都市上京区堀川通今出川南入西側
Tel : 075-432-6131
営業時間:
AM10:00 ~ PM5:00 (11/1 ~ 2/28)
AM10:00 ~ PM6:00 (3/1 ~ 10/31)
定休日:12/29~1/3
http://nishijin.or.jp/